真夜中に玄関のドアをトントンと叩く音。
もしかして・・・・・
おそるおそるのぞくと、サトル君がドアの前で立っていた。
トントン
またドアを叩かれる。
その時わたしは酔っ払っていたせいか、ついドアを開けてしまった。(チェーン付きだが)
そこには今にも泣きそうなかなしそうな顔をしたサトル君の姿が・・・。
めっちゃ泣きそう。
泣きそうなサトル君がなんだか可愛いくて
つい笑ってしまった。
真夜中に別れた男が家におしかける。
シチュエーションとしてはなかなかホラーなのに。
泣きそうなサトル君が愛おしいとまで思ってしまい、ついチェーンを外してドアを開けてしまったのだ。
その瞬間、あんなに弱々しく見えたサトル君が途端にイキイキとし、元気になった気がした。
(しまった、ブロックしてちゃんと別れるつもりだったのに)
同棲解消後、こちらから連絡した事は一度もないし、喧嘩したのを機にブロックまでした。
なのになぜまたサトル君はわたしに会いに来るのだろう。
情?
情ならわたしもあった。
ただ、情はあってもちゃんと別れたかった。
だから、本当に本当に終わりにしたいと思って連絡先もブロックしたのに。
再び、中途半端な関係は続いた。
本当にちゃんとお別れしなければ。頭の中ではそう思っていても、喧嘩をせず仲が良い時はサトル君と一緒にいる時間は幸せだった。
そのうちサトル君はまた一緒に暮らしたいと言ってきた。
同棲は家賃も安くなるし正直金銭面では助かる。
しかし、喧嘩をしてお互いまた傷つけ合うのがこわかった。
だからこそ、かなりキツイ口調でサトル君にこう言った。
「絶対にまた同棲なんて無理。というか、プライベートで会うのも終わりにしよう。もうお願いだから別れて」
意地悪な顔してただろうな、この時のわたし。
サトル君の反応を見て驚いた。
えっ・・・・・・・
背中が小さく震えているのだ。
つづく
その3
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