先月、実家に帰省中、父が倒れて入院したのを機に高齢の親の安全を考え見守りカメラを五台実家に設置した。父はアルコール依存症で、後に認知症も始まっていると病院で知らされた。(知らされる前からその予感は強く感じていたが・・・)
設置前、見守りカメラで様子を見られるの嫌じゃないかと母に聞いたら「嬉しい〜安心だわ〜」との事。
北陸の実家から関東の自宅に帰って来ても、カメラを通して母と退院した父を見守れるのがありがたい。とはいえ、父が要介護4に認定されたので、常に実家の様子が心配だ。もちろん今後はできるだけ多く実家に帰ろうと思っている。
そんなこんなで、一日中親の様子が気になり、実家のカメラを見ていた。
このカメラがものすごく優秀で、一台数千円の安さなのに、機能が色々ついている。
例えば、カメラの向こうにいる親達に話しかける機能もあり、会話が可能。
また、人が通ったり動いたりすると「動きを察知しました」と分単位で通知がくる。
他にも録画機能がついていたり、カメラの角度を変える機能がついていたりして本当に素晴らしいのだ。
わたしは今日も、昼過ぎに起きてから実家を見守りカメラで様子を見ていた。(昼夜逆転ぎみ)
父は、寝ている。
というか父は一日のほとんどを寝ている。
そして母はどこにいるのだろう。
姿が見えない。
と思うと二階の母の寝室で「動きを検知しました」とたくさん通知が来ていた。
しかし、二階の母の部屋は電波が悪く、なかなかカメラが動作しない時がある。
この時もそうだった。
わたしは、早起きの母がずっと寝室にいる事に違和感を感じて母に電話した。
一回目つながらない。
二回目続けて母にかける。またつながらない。
その間も、二階の母の寝室で動きを検知したという通知がリアルタイムでたくさん来ている。
しかし肝心のカメラが動作しないので、二階の様子を見る事ができない。
父は一階の寝室ですやすやと寝ている。
三回目、母に電話した。
そして三度目の正直でようやくつながった。
「まーちゃん、どうしたのー?」
元気そうな母の声が聞こえてきたが、わたしは胸騒ぎを覚えた。
電話の向こう、つまり母がいる場所がざわざわとしていたからだ。
あきらかに外にいる様子。
ゾォォ、と血の気が引いたわたし。
「お母さん今どこにいるの?」
「えー? スーパーよー?」
元気に母が答える。
ゾォォォォォォォォォ!
「お母さん、絶対に今家に帰らないで。カメラの通知がずっと今も来てて二階に誰かいるかもしれない。あ、警察・・・!」
パニックになるわたし。
母と通話しながらカメラの様子を見ても、やはり二階で動きを検知したというお知らせは来るが、カメラは動作しないままだ。
父は変わらず一階で寝ている。
「なぁに言ってるのー。誰も二階にいるわけないじゃないー」
わたしがまるでジョークを言ってるのだと思っているのだろうか、母は。
そんな面白くもないジョークなど言わないのに。
また、この瞬間もずっと二階で動きを検知した、と通知がなりやまず、汗だくで震えながら「警察に連絡した方がいい、警察にわたしが連絡する! お母さんは絶対にまだ家に帰らないで」
と叫んでいた。
横の部屋で心配そうにする夫さん。
「なーに言ってるの、警察になんて電話しないでちょうだい、近所の人に恥ずかしいわー、なんにもないわよ。だって二階にだあれもいないんだから」
「だから、誰もいないからこわいの! 誰もいないはずなのに、ずっと二階から通知がたくさんくるの! こんな事一度もなかったよ、だから絶対に帰らないでお願い。ほら、今通知来てる画像LINEで送ったから見て!」
叫んで母を説得する。世界一愛する母はわたしの命。
その時、ようやく二階のカメラがつながった。
「あっ・・・!」
そこにあった光景は・・・
「お母さん、ベランダの窓を開けたまま出かけたでしょう」
「あー、今日朝空気のいれかえしてそのまま閉めるの忘れてたわ〜」
・・・ほっ。
「よかった・・・、風で窓のところにかけていた洗濯物のタオルが動いていただけだったわ・・・」
横の部屋で夫さんがふき出した。
「ほーら、大丈夫だったでしょう。今日は土曜日だし、近所の人達みんな家にいるんだから安全よー。大体この家は周りが家に囲まれてるから何にも心配いらないのよ〜それにとられる物なんてないし、ふふふっ」
と陽気な母。
本当によかったー。
タオルでよかったー。
(なぜか初期設定で二階の部屋がベビールームの表示になってるけど母の部屋です)
まんが日記シリーズ最新作です。↓
病んでニュージーランドの牧場へ行った話です。