稽留流産と宣告されて、自然排出した記録〜その3〜

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日記
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2022年4月3日。稽留流産と宣告されてから3日後。順調に妊娠していたら13週3日目だった。

妊娠が判明してから、バイトの時間を減らして基本的にランチタイムのみ働いていたが、この日は人手不足でランチタイムとディナータイム両方働いた。

接客業は大好きだったが、稽留流産と宣告されてからの数日間、子連れのお客様を見るのが直視できないくらいつらかった。特に赤ちゃんやベビーカーを見ると涙が溢れそうになった。わたしの赤ちゃんは、お腹の中にいるけど心拍が止まっている・・・、そう思うと、どうしようもない悲しみの波にのまれて、息苦しくなった。

それでも、その感情をおさえこんで、から元気に働く。

夜は、夫のサトル君が仕事の後、わたしのバイト先に来てくれた。

夜22時頃バイトを終えて、一緒にサトル君と帰ろうとする時、突然強烈なお腹の痛みが始まった。

「いてて・・・お腹が痛い」

なにかの勘だが、「始まった」気がした。

稽留流産と宣告されてから、稽留流産で自然排出した方々の経験談をブログなどのSNSでこの数日間ずっと読んでいた。

わたし自身、はじめは手術より自然排出を希望していたからである。

そのため、経験された方々のブログなどを読んで自然排出する数時間前から陣痛に似た痛みが始まる事を知った。(人によって個人差はあるかもしれません)

「サトル君、自然排出始まったかもしれない。今日の夜中に赤ちゃん出てくるかもしれない」

サトル君には念のため、伝えておいた。

冷静にこの現実を受け入れつつあるのに、それでも、心のどこかで赤ちゃんがもしかしたら生きてるかもしれない、とまだ思っている自分もいた。

強烈な腹痛は数分間続いては、またしばらくおさまった。かと思うとまた痛くなる・・・。その繰り返しだ。帰宅後、顔を洗って歯を磨いてすぐ横になる。

出血する量もどんどん大量になっていく。

気がつくとわたしは疲れからか寝ていたが、夜中またお腹が痛みだし目が覚める。

先ほどよりももっと強い痛みだ。

夜中の1時頃だっただろうか。横ではサトル君が疲れた顔をして寝ている。

なるべく起こしたくない。しかし・・・

「痛いよ! 痛いよ〜!」

あまりの激痛に小声だが騒いでしまう。

心細い。こわくて仕方ない。

また、しばらくして腹痛がおさまると、わたしは自然排出した方々のブログを読み返した。

真夜中、孤独でかなしくて仕方ない自然排出が今始まろうとしている中、わたしだけじゃないんだと、どれだけ心強く励まされたか。

そんな感謝もあり、わたしもこうやって記録に残す事を決めた。

※この先ずっと読み進めていくうちに、自然排出に関して生々しい表現があるので、苦手な方はご注意下さい。

お腹の痛みは、今まで経験した中で一番痛かった。生理痛の何十倍、と表現している方がいたが、まさにそんな感じだ。しかし、その痛みはずっと続くわけではなく、数分でおさまるのが救いだった。痛くなってはおさまり、また痛くなっておさまる、の繰り返し。

その痛みが繰り返す中一度だけ、やっぱりもう少し早く決断して手術すればよかった、と後悔した。

しかしすぐに、このお腹の痛みはもうすぐ可愛いわたし達の赤ちゃん(たとえ心拍が停止している状態でも)に会える痛みだ、と前向きに思うようになり、痛いのになにか不思議とあたたかいベールで守られているような感覚がした。

夜中の3時を過ぎた。

お腹の痛みとおさまる時間の間隔がどんどん狭まってきた。

「サトル君、赤ちゃんもうすぐ出てくるかもしれない」

起こすのはかわいそうだったが、やはり心細くてサトル君に声をかけた。

「んー・・・」

眠そうだったが、優しくわたしをぎゅっと抱きしめてくれた。

その後、どんどん血が大量にドバーッと一気に出るたびにナプキンの上に赤ちゃんが出ていないから確認しては変える、を繰り返した。

午前3時50分頃。

「あ、痛い痛い痛い!」

「大丈夫?」

オロオロと心配するサトル君。

「大丈夫じゃないけど、とりあえず一人で大丈夫!」

意味の分からない日本語で返し、お腹を抱えてゆっくりと風呂場へ行く。

風呂場にたどり着く直前のその瞬間だった。

スルリ・・・

何か、固形の物体を排出した感覚がはっきりとあった。出血ではない何かを。この時、痛みは一切なかった。

ずっと続いていたお腹の痛みもその瞬間嘘のようにおさまった。

おそるおそる、下着をおろしてナプキンの上をのぞきこむ。

血の海の上で、半透明のような肌色のような何かが・・・

「サトル君、何か出た! 出てきたよ!」

驚いて風呂場からサトル君を呼ぶ。

ずっとそわそわと待っていてくれたのであろうサトル君が慌てて来てくれた。

おそるおそる出てきた物体を眺めた。

ちゃんと頭や体ができていて手足もあり目、鼻、口がしっかりある・・・

「赤ちゃんだ、赤ちゃんだよ〜・・・うっうっうっ・・・」

ナプキンをそっと取り外し、風呂場の床に置いた。

「赤ちゃん、本当に心拍停止していたんだ、夢じゃなかったんだ・・・どこかで生きてるって思ったのに・・・うわ〜ん」

子供のようにその場で泣き崩れた。

サトルも一緒に大泣きした。

夜中なので静かにしなければいけないのに、そんな事を考える余裕が一切なかった。(ごめんなさい)

「可愛い・・・こんなに可愛いんだね」

サトル君が赤ちゃんを眺めながら言った。

言われて少し落ち着いて赤ちゃんを見ると、サトル君が言う通り本当に可愛い。可愛いくて可愛いくて仕方ない。

まるで小さなお人形のよう。

「こんなに成長してたんだね。可愛い、可愛いすぎるね」

あまりの可愛いさにわたしは、赤ちゃんに会えた嬉しさと、亡くした悲しみが同時にこみあげて、わけがわからなくなった。

赤ちゃんは両手で頬杖をつくような愛らしいポーズで目はぱっちり見開いていて口元はどことなく笑っているように見える。とても穏やかな表情をしていた。

「こんなに成長していたのに、やっぱりわたしのせいなんじゃ・・・わたしがめちゃくちゃ忙しい日、○○(バイト先のレストラン)で無理して働いたからだ・・・少し重たい野菜を数回だけど運んでしまったからだ・・・気をつけていたのに! わたしのせいだ、絶対わたしのせいだ」

「違うよ、まーちゃんのせいじゃないよ。きっと赤ちゃんがまーちゃんのお腹の中が居心地よくて幸せだったからこんなに成長してくれたんだよ。こんなに可愛いい赤ちゃんを出産してくれてありがとう」

サトル君の言葉にどれだけ救われたか。その後も今もずっと自分を責め続けているが、その度にサトル君が言ってくれた言葉を思い出す。

「まーちゃんすごいね。ひとりでこんなに可愛い赤ちゃんを産んでくれて。立派な出産だったよ」

そう泣きながら優しい笑顔でサトル君が言ってくれた。

当初は、わたしの体を心配して手術をすすめてくれていたサトル君だが、自然排出でよかったとふたりでその後話した。(わたしはたまたま何の問題もなく排出できましたが、出血の量など個人差はあると思うのでお医者様とよくご相談してください)

自然排出のおかげで夫婦でこんなに可愛い我が子の姿を見られた事は一生忘れないし、宝だ。

わたしは赤ちゃんの姿を携帯のカメラにおさめた。流産した友人が以前、自然排出した赤ちゃんの写真を撮った、と言っていたのを思い出していた。赤ちゃんの最後の姿を写真に残したいと思う母になった友人の気持ちをこの時やっと理解できた気がする。

赤ちゃんを病院で病理検査に出す可能性を考え、用意していたタッパーに、サランラップをしいて赤ちゃんをそっとのせて冷蔵庫に入れた。

「ごめんね、こんなに冷たい冷蔵庫に入れてごめんね・・・」

泣きながらわたしが言う。

その後、シャワーしてかかりつけの産婦人科に電話した。事前に、出血がひどい時や自然排出した場合などは夜中でも電話くださいと、ご親切に言っていただいていたのだ。

電話で応対してくださった看護師の方に自然排出した事とまだ出血が続いている事を伝えると、朝一で診察の予約をとっていただく事になった。

その時

「赤ちゃんも連れて来てくださいね」

と言われて、涙が溢れた。

「連れて」とひとりの人間として扱われた事が嬉しかった。あたたかかった。

出産した赤ちゃんとの別れは本当にもうすぐ近づいている。13週3日目までお腹の中にいてくれた赤ちゃん。

名残惜しくてさみしくて、冷蔵庫の中で眠る小さな小さな赤ちゃんの姿を何度も眺めた。

ちゃんと産んであげられなくてごめん。

大好きだよ、愛してるよ。

心残りがひとつあった。病理検査に出すため、赤ちゃんに素手で一度も触れずにいた事。

「なでちゃだめかなぁ」

わたしがサトル君に聞くと

「あんまりよくないんじゃない?」

「でも、今この子をなでないと後悔しちゃいそう。一度だけ・・・」

「うん、そうだね。まーちゃんがそう言うなら赤ちゃんなでてあげようね」

手を石鹸でしっかり洗って、冷蔵庫で眠る赤ちゃんの小さな頭をサトル君とわたしで順番にそっとなでた。

柔らかく、プルンとした感触だった。一生忘れない。愛おしくてたまらなかった。

そして一度だけ、冷蔵庫から赤ちゃんが入っているタッパーを取り出し、わたし達の枕と枕の間に寝かせた。

生きていたら三人でこうやって一緒に寝られたのに・・・。

かなしくてさみしくて仕方ない。

赤ちゃんは、もうお腹にはいないんだ・・・・・・・。

つづき

稽留流産と宣告されて自然排出した記録〜その4〜
2022年4月4日、午前3時55分頃。13週3日目までお腹にいてくれた赤ちゃんが出てきてくれた。朝一でかかりつけの病院で診ていただくことになり、病理検査に出す赤ちゃんを連れてサトル君と家を出た。コロナ禍で、本来は旦那さんの...

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