やっと母に言えた

日記

今年の春に流産してから3ヶ月。

夏がきて、ようやく母に話す事ができた。

もうお腹に赤ちゃんはいないという事を。

出産予定日は10月7日だった。

流産した事を知らない母は電話でいつも

「赤ちゃんに会えるの楽しみだねぇ。1、2、3(ヶ月)・・・もうすぐだ」

と指折りで数えては、赤ちゃんの誕生を心待ちにしてくれていた。その数える数字がどんどん小さくなっていくのがつらかった。

ただ、母もちょっとした異変を感じていたはずだ。

「まあちゃん。しばらく赤ちゃんのエコー写真送ってこないけどどうして?」

母は、赤ちゃんの成長を楽しみにしていてわたしが送った赤ちゃんのエコーの画像をいつも喜んでくれた。

だからこそしばらくエコーの画像を送ってない事を不思議に思ったはずだ。しかし、聞かれる度にその場をごまかして、自己嫌悪になっていた・・・。

早く言わなきゃ・・・そう思いながらも、母の血圧が心配だったり、悲しむ顔が浮かんだりしてなかなか言えないままとうとう夏を迎えたのだ。

母と姉には、実は妊娠が判明する前から「妊娠したかもしれない」と話していた。初めての妊娠だったが、体調の変化を感じてソワソワしていた。

妊娠したかも、と思ったのも言葉にしたのもあの時が初めてで、数日後本当に妊娠が判明した時はみんなで大喜びした。

あんなに世界が輝いているように思える日々を過ごしたのは今でもずっと宝だ。

その後、心拍が確認できるまでは不安で毎日のように泣いたりもしたが、無事出産予定日も決まり、母子手帳も受け取って赤ちゃんも10週の壁を乗り越え全てが順調だと思っていた。

しかし、13週3日目の4月4日、わたしは心拍が止まった赤ちゃんを自然排出した。

稽留流産と告げられたのは12週6日目。赤ちゃんの成長はサイズからして、おそらく12週前には止まっていた可能性があるとの事だった。

最後に元気な心拍を確認できたのは10週4日目で、12週6日目に突然出血するまで何の異変もなかった。

流産した事を電話で伝えたおとついの夜。

わたしは母に自然排出した時の赤ちゃんの写真を送った。こう書くと、亡くなった赤ちゃんの画像を送るなんて不謹慎だ、と不快に思う方ももしかしたらいらっしゃるかもしれない。しかし、どうしても母に見せたかった。わたしの赤ちゃん、そして母の孫だから。もちろん母が拒否するなら送らなかったが、了承を得て見てもらう事にした。

自然排出した4センチ近くの赤ちゃんは、まるでお人形さんのようにとっても可愛いかった。頭の形もきれいで体もできていて目鼻口もちゃんとあって・・・パパ似の大きな優しい目が特徴的だった。

正直、母は最初、赤ちゃんの画像を見るのが少しこわいと言っていた。かわいそう、と。

わたしも、自然排出するまではそう思っていた。

おそらく12週未満で成長が止まっている赤ちゃんの姿はあまりにも未知だったから。そして亡くなってる姿を直接見るのもこわかった。

しかし、出てきてくれたのは、世界一可愛い赤ちゃんだった。外見的な可愛いさは想像以上だったけど、きっともっと週数が早いうちに流産していたとしても愛おしい我が子には変わらなかったと思う。

「可愛い顔だねえ。目も大きくてお人形さんみたいだね」

赤ちゃんの画像を見た母はしんみりとそう言った。この日の夜、母は泣いてあまり眠れなかったのだという。悲しい思いをさせてしまい、今でも申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

翌日、母から画像が何枚か送られてきた。

そのうちの一枚。

仏壇に供えられているのは、赤ちゃんせんべいやお菓子。そして見た事のない人形が何体か椅子に置かれていた。

画像と一緒に母からこんなメッセージが書いてあった。

【まこちゃんお元気ですか。今日はまこちゃんの赤ちゃんと一緒に○○○へ行ってきました。一緒に景色を見せてあげました。バスの中から景色を見せてあげて語りかけていました。今日はとても楽しかったです。赤ちゃんと一緒に○○○見て歩きました。お祈りしました。またできることならまーちゃんのお腹にまた戻ってきて新しく行けることができますよようにどうか幸せになりますようにお祈りいたしますとても可愛い可愛い子ですね名前は何て言うのかなまだつけてなかったのかな】

※○○○は近くの大きな公園の事です。(ペンネームは母には言っていませんが、こちらのメッセージをブログに載せる許可は母から得ています)

母は、赤ちゃんの画像を開いて景色をたくさん赤ちゃんに見せてくれたのだという。

わたしは涙が溢れて止まらなかった。

お母さんがわたしのお母さんで本当によかったと思った。

人形は、母が近くの雑貨屋さんで赤ちゃんがさみしくないようにと買ってくれたのだという。

わたしはなんだか本当に、赤ちゃんが昨日、母と一緒にお出かけしてくれたような気がした。あたたかいなぁ。

ありがとう、お母さん。感謝してもしきれない。

そしてありがとう、赤ちゃん。

あなたのおばあちゃんはとっても優しくて愛情深い人だよ。

抱っこしてもらいたかったな・・・・・・・・。

無事に出産できるまで、母に赤ちゃんの事は言わなければよかった、と少し後悔もしていたが、わたしはやっぱり赤ちゃんの存在を母に知ってもらえてよかったとも思っている。とても複雑だし次回もし妊娠できても母に伝える時はかなり慎重になるかもしれないが・・・。

流産を伝えた夜、母なりに流産の事を色々と調べていたのだという。

母は流産経験はないけど、ものすごく流産について詳しくなっていて驚いた。

憶測で流産について何か言われるかもしれないと少しは覚悟していたので、流産を伝えた翌日、母のあまりの詳しさに拍子抜けした。

言い方は変かもしれないけど、そんなふうに色々と調べてくれた母が頼もしく感じた。



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