稽留流産

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日記
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今日で本当は妊娠13週を迎えるはずだった。

ものすごく悲しい朝を迎えた。パパとまた朝からずっと大号泣していた。何でこんなに無限に涙が溢れ出るんだろう。

二週間前の妊婦検診では、二回目の心拍数も確認できて赤ちゃんの体も前回の二倍ほどの大きさに成長していて「順調です」と先生に言っていただいた。

なんの予兆もなかった。昨日、突然出血した。人生初めての生理以外の出血。妊娠前も不正出血を経験した事のないわたしはかなりびっくりしてしまった。かかりつけの産婦人科に電話して、急遽時間外で診ていただく事に。

「遅くにすみません」
わたしがそう謝ると

「大丈夫ですよ」
と明るい笑顔で言ってくださった初対面の先生。(かかりつけの産婦人科は曜日ごとに診察する先生がかわる)

「出血は大丈夫そうですね」
初めに出血を診ていただき先生に言われ
「よかったです」
と涙ぐみながら安心したのも束の間・・・

「超音波の機械で赤ちゃんの様子見ていきますね」
と言われたが、しばらく無言の先生。
いつも診ていただく先生と違う方だったので
(この先生はなかなか赤ちゃんの様子言ってくれない方なのかな)とぼんやり思っていたら・・・

「うーん、さっきからずっと見てるんですけど、赤ちゃんの心音が確認できませんね・・・」

言われた瞬間は、取り乱す事もなくなぜかわたしは妙に落ち着いていた。

「やっぱり、ずっと探して見てますが心音確認できませんでした。先ほどの診察室でまたお話します」

先生に言われ

「はい・・・」
無気力に返事するのが精一杯だった。

頭の中が真っ白になるとはこういう事なのだろうか。
今、何が起こっているのかよく分からない。

「先ほどもお伝えしたように、赤ちゃんの心拍数が確認できませんでした。残念ですが・・・」

その瞬間、ワッと涙が溢れ出て止まらなくなってしまった。

看護師さんが
「辛いね、辛いね」と言いながら背中を優しくさすってくださった。
「ありがとうございます・・・」
看護師さんに差し出されたティッシュで涙をふいても、どんどん溢れ出てて止まらない。

「妊娠してるのに、わたしが最近立ち仕事で忙しい中働いたりしたから、だからわたしのせいじゃ・・・」
とっさに自分を責める言葉が出てしまう。妊娠判明前から生物やお酒をやめ、走るのもやめて判明後は立ち仕事の時間も減らしてさらに気をつけていた。
それでも、忙しいランチタイム働く事が体に負担になっていたのではないだろうか。
週に二回、野菜が運ばれてくる時、気をつけてはいたが、少し重たいものを何度か持ってしまったのが原因なのではないだろうか。

「赤ちゃんのサイズを見ると、今日心拍数が停止したのではなく、もっと前・・・12週に入る前らへんにはもう成長と心音が止まっていた可能性があります。染色体の異常で赤ちゃん側の問題である事が多いので、お母さんはどうか自分を責めないでください」

血液検査や子宮頸癌の検査も異常はなく全く問題ないと言われた。

染色体の異常で起こる妊娠初期の流産率は、妊娠が判明してからまだ間もない頃、眠れないくらいものすごく考えこみ、毎晩のように泣いていた。
だから安定期、という言葉があり安定期に入るまで周りに報告しない妊婦さんが多いという事も知っていた。

妊娠した事も奇跡、胎嚢を確認した事も奇跡、心拍数を確認した事も奇跡。
胎嚢を確認した日も実はわたしは不安でずっとずっと泣いていた。
ちゃんと心拍数確認できるのだろうか、染色体の異常で生む事ができなかったらどうしよう・・・。

そんな不安で泣きじゃくる日々が、前向きに光がさしこんだ世界に変わったのが、二回目の検診で初めて心拍数を確認できた日。

先生が元気な心音を聴かせてくださった。

その瞬間、光に包まれた温かい涙が溢れた。

もう夜な夜な不安になりながら泣くのはやめようと決意した。

力強い心拍数を確認できたこの奇跡を信じよう。

そう思いながら、昨日のあの瞬間までずっとこの子は絶対に元気に生まれてくる、何の根拠もないのに思っていた。安定期に入ってないので、リスクがある事は頭のどこかできっと分かっていたはずなのに。

それでも赤ちゃんがお腹の中にいる。それはとても幸せな時間だった。愛おしくて愛おしくてたまらなかった。

心拍数が確認できず、稽留流産と告げられた昨日、世界が一変した。先生に今後のことについて説明された。

手術か、自然排出か。赤ちゃんがある程度の大きさになっていることもあり、いきなり排出するリスクを考えると手術を勧められたが、まだわたしは混乱していて現実を受け止められず、二週間ほど考えさせていただく事にした。
その間に自然排出がなければ、手術になる。

帰り道も電車の中でもずっと涙が止まらずぐしゃぐしゃで、そのまま最寄りの駅で仕事帰りのパパを待った。

「まーちゃん」

ずっと泣いてるわたしに何があったのか、気になる様子のパパ。

なかなか言えない。でも言わなければいけない。

「・・・家に帰ってから聞くのと今聞くのどっちがいい?」

「今かな・・・」

「あのね、赤ちゃん・・・心拍数止まってるって言われちゃった・・・」

言いながら、ドドドッと勢いよくさらに涙が溢れ出てる。

パパがその後何てわたしに言ったか覚えてない。

しかし、一緒に帰り道、支え合って大号泣しながら帰ったのは覚えてる。

帰宅してからも、真っ暗な部屋の中ふたりで泣いた。

泣いて泣いてこんなに泣いたのは人生で数えられるくらいだし、もしかしたらこんな悲しい出来事は人生で初めてかもしれない。

ふたりでずっとずっと泣いていた。夜中目が覚めてはまた泣いて、朝がきた。

「夢見たよ。前を向いてねって誰かに言われた夢」

パパがそうぽつりと言った。

「赤ちゃんだよ、それ絶対に赤ちゃんだよ。赤ちゃんがわたし達を心配して言ってくれたんだよ」

また涙が溢れ出て興奮して泣きじゃくるわたし。朝からまた二人で大号泣。

泣いても泣いても枯れない涙。泣きすぎてふたりとも頭が痛い。

しかし、最初から生まれることができないと運命が決まっていたとしても、赤ちゃんがわたし達のもとへ来てくれた事にありがとう、とパパと話していた。

世の中こんなにも愛おしく幸せな事があるのだと教えてくれた赤ちゃん。

そしてこんなにも悲しい事があるのだとも同時に教えてくれた。

命は奇跡。

パパを抱きしめながら、パパが元気に生まれてきてこうやって生きていてくれる事にありがとう。

パパを産んでくれたおかあさん、おとうさんにありがとう。

わたしのおかあさん、おとうさんにありがとう。

元気に産んであげられなかったけど、わたしのお腹の中にきてくれて元気な心音を聞かせてくれた赤ちゃんにありがとう。

姉や甥っ子姪っ子友人親戚わたしの大切な人達の命、この世にいるみんなみんなの命にありがとう。


妊娠して初めて、生まれてくる事の奇跡をこれほどまでに実感した。

赤ちゃんができた時、一緒に喜んで、心拍数が確認できないと告げられた時一緒に泣いてくれたパパの存在にどれだけ励まされたか。
「また次があるよ」わたしが絶対に言われたくない言葉を言わないでくれた。
この子はこの子しかいない。何も言わずにわたしを泣きながら抱きしめてくれたパパがあたたかかった。この人と結婚して一緒になって本当によかった。
「一生、ママのそばにいるよ」
「わたしも」

まだ、これを書きながら泣いてるし、この後働きたくないし、叶うならしばらくひきこもりたい。

しかし、前を向こう。本当はまだそんなに前向きになれないけど。

泣きながら立ち止まりながらでもいいから生きようと思います。

最後に元気な心音が確認できた二週間くらい前の10週4日目のエコーです。可愛くてたまらない。ありがとう。本当に本当にありがとう。

お読みいただきありがとうございます。皆様が元気で幸せでありますように。

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